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【AWS re:Invent2023】AIを用いた製造業界のMobility Innovation

2023.11.30

本記事のポイント

「AUT207-INT | Manufacturing and mobility innovation in the cloud」セッションにて紹介された内容を皆様に共有いたします。
本セッションでは製造業界におけるmobility innovation実現を、AIがどのように役立つのかをテーマとしていました。具体的にAIをどういった要望に応えるためにどう使っていくか、といった内容が主となっております。
AIや製造業界に携わる方、興味がある方はぜひご覧ください。



AWS re:Invent とは?

re:Inventとは、Amazon Web Services(以下、AWS)が主催するAWSに関するセッションや展示ブース、試験準備のためのブートキャンプやゲーム化された演習などを通じて、参加者が主体的に学習できるイベントとなっております。

昨年も今年同様でラスベガスとオンラインにて開催されており、様々な新サービスや新機能が発表されました。オンサイト参加者5万人、バーチャル参加者は30万人を超えるAWS最大規模のイベントとなります。

セッションレポート(Day2、Manufacturing and mobility innovation)

今回は、11/28(火) 11:00~12:00に開催されたブレイクアウトセッション
AUT207-INT | Manufacturing and mobility innovation in the cloudに関する講演をリポートします。

公式サイトによるセッション紹介を日本語訳すると、以下のような内容になります。

自動車、航空宇宙、家庭用電化製品などの産業企業は、データとクラウド テクノロジーを利用してビジネスを再発明し、運用を最適化し、市場投入までの時間を短縮し、新たな収益源を生み出すことを目指しています。 業界のリーダーであるSiemensが、AWS を活用した Xcelerator 産業用ソフトウェア ポートフォリオをどのように活用して革新を進めているかについて、複数の例を通して語ります。 製品開発、サプライチェーン、製造全体にわたるイノベーションを加速するための、日本および北米における AWS との連携についてHondaが紹介します。

引用元:AWS re:Invent公式サイト

登壇者

登壇者はこちらの方です。

会社名 登壇者 役職
Amazon Web Services Wendy Bauer VP, Automotive and Manufacturing
Siemens Digital Industries Software Tony Hemmelgarn President & CEO
Honda Tadafumi Nogawa GM, Connected Solution Devlopment
American Honda Jay Joseph VP, Sustainability and Business Development

セッション会場の様子

基調講演直後の同会場(Venetian)ということもあり満席に近い状態でした。

AUT207-INT_会場の様子

はじめに

製造業ではほかの業界と比較しより多くのデータを取り扱っており、今後ITの進化によってより多くのIoTデバイスが接続され膨大なデータが出力される見込みです。この膨大なデータが作成されるため、顧客はこのデータをいかに取り扱うかが重要になってきます。

以下の課題を解決しながら生産性の向上につなげていく必要があります。

  • 膨大なデータの保存とデータへのアクセス
  • 機械学習とAI利用
  • 適切なデータ提供
  • 回復力
  • コスト削減
  • 特に製造業ではシステム毎の独自性が強く、個別のユースケースとして対応していく必要があります。そしてプライベート・ジャーニーと同様にカスタマー・ジャーニーを統合的に考え、この両面からイノベーション、データを効果的かつ効率的に管理する準備を進めていかなければなりません。
    本セッションでは、プライベート・ジャーニーとカスタマー・ジャーニーの両面から、AIがどういった形で役立つかを紹介していきます。

    Customer journey

    顧客サービスのイノベーションについて、プロセスを4つのフェーズに分けてAWS サービスが紹介されていました。また導入事例が紹介されておりました。

    ■ Discovery & Pre-Sales
    データ分析によりAIで特定の製品構成にパーソナライズした推奨事項を作成するなどの利用ケースが想定されます。

    ・AWS Clean Rooms
    顧客⇔パートナー間でデータセットを相互に共有したりコピーすることなく、集合的なデータセットを簡単かつ安全に共同作業および分析できるようになります。

    ・Amazon Pinpoint
    チャネル、キャンペーンなどの大規模な顧客コミュニケーションを実現するためのカスタマイズされたツールが提供されます。分析した情報をもとに各顧客にマッチした広告などの通知をすることが可能です。

    ■ Negotiation, purchase & finance
    AIを利用したローンや融資書類などのバックエンド処理と提出を自動化、不正検出などの利用ケースが想定されます。

    ・Amazon Lex
    高度な自然言語モデルを備えたフルマネージドのMLサービスであり、テキストベースのデータの処理・処理の自動化に利用されます。After Salesで会話型インタフェースを導入することにも利用可能です。

    ■ After Sales
    消耗品を購入した顧客に対し、適したタイミングで購入やメンテナンスの提案するなどのケース、そのほか購入後のサポートなどにおいて利用されるケースが想定されます。

    ・Amazon Connect
    クラウド型コンタクトセンターのサービス一式が、優れたサービスと低コストで提供されています。

    ■ Retention & Loyalty
    AIで複数の顧客データを分析、ライフスタイルの変化に応じた提案を行うなどのケースが想定されます。

    ・Amazon Personalize
    顧客データからアイテムの推奨事項やユーザーセグメントを生成するマネージド機械学習サービスが提供されています。

    ・AWS Entity Resolution
    通常顧客データは複数のシステムに分散しており、リンクの照合やレコード関連付けなどにおいて利用されます。



    Product journey

    プロダクトサービスのイノベーションについて、Customer journeyと同様4フェーズに分けてAWS サービスが紹介されていました。
    また自動車業界においてはAWS IoT Fleet WiseとIoT Coreの統合が発表されており、これによりリアルタイムでの洞察が容易となり、顧客体験の向上が期待されています。

    ■ Research & Development
    クラウドを利用し研究開発から始まり機械学習モデルを使用してエンドツーエンドのワークフロー作成までを高速化するケースなどが想定されます。

    ・Amazon WorkSpaces
    管理されたデスクトップをサービスとして安全に提供でき、リモート作業が容易になります。

    ・Autonomous Driving Data Framework
    自動運転データのプロセスと分析するための環境を迅速に開発することが可能な、リファレンスガイド付きのソリューションとなります。

    ・Research and Engineering
    クラウドでの研究、コンピューティング、製品設計を簡素化するためサービスであり、今月(2023年11月)にAWS上にローンチされました。複雑なワークロードを実行できる単一画面が提供されています。

    ・EC2 DL2Q
    AI 100 標準アクセラレータを備えた Qualcomm ハブを搭載したインスタンスであり、今月の初めに提供が開始されました。

    ■Design Optimization
    生成 AI の必要な学習量の削減、設計時に製品を微調整するためのソフトウェア定義に最適化されたコードを記述するといったケースが想定されます。

    ・Amazon SageMaker
    フルマネージドの機械学習モデルを提供します。

    ・Amazon CodeWhisper
    自然言語での開発者のコメントと統合開発環境 (IDE) でのコードに基づいて推奨コードを生成するサービスとなります。コードを評価し脆弱性の検出も提供されます。

    ■ Manufacturing Operations
    運用においてAWSでは多数の専用のサービスを提供しています。

    ・Amazon Monitron
    機械学習を用いて機器の異常な状態を検出し、予知保全を可能にするエンドツーエンドのシステムです。計画外のダウンタイム削減、機器故障の迅速な検知が可能です。

    ・AWS IoT TwinMaker
    物理システムとデジタル システムの運用上の制約の構成を提供しており、リスクを軽減することが可能です。様々なセンサーからのデータをもとに、測定・分析しデジタル ビジュアライゼーションを作成することができます。

    ・AWS IoT SiteWise
    産業機器からのデータの収集、保存、整理、マスタリングを簡素化するサービスです。
    今月初めにこれらのサービスをサポートする拡張業界プロトコルが発表されました。
    AWS IoT SiteWise BatchはAWS IoT SiteWiseの機能でもあり、複数のセンサー(組織化されたプロセス・サービス機能など)からのバッチデータ取得が可能となります。

    ・Amazon Lookout for Vision
    製品の画像での検査を自動化および拡張を提供するサービスです。製品の検品などに利用することで製造物の品質を向上させことが可能です。

    ・Amazon Supply Chain
    昨年発表した機能であり、データを統合し機械学習を活用した実用的なインサイトを提供するサービスです。プラットフォームを再構築することなく、前払いのライセンス料や長期契約を必要とせずに、既存の ERP およびサプライ チェーン管理システムに接続することが可能です。

    ■ Product Experience
    AWSではメーカーが顧客と開発者の両方にとって実用的なインサイトを含む、製品のHealthに関する豊富なビューを取得できるように支援しています。

    ・AWS IoT FleetWise
    テレメトリデータをリアルタイムで収集し、そのデータを使用して安全性と自立性の向上をサポートします。例えば耐用年数の終了した部品の特定などが可能となります。

    ・Connected Mobility Platform (Solution) 2.0
    顧客が適切に設計されたコネクテッド ビークル プログラムの基礎コンポーネントを確立するためのサポートを提供しています。


    Industrial Data Fabric

    AWSではパートナーと協力して、データを資産として収集するためのスケーラブルで統一された統合メカニズムを実現する、データ管理アーキテクチャの構築を支援しています。これをIndustrial Data Fabricと呼んでいます。


    事例紹介

    実際の製造業におけるAIを用いたイノベーション事例が2社紹介されていました。

    Siemens社のイノベーション事例

    Siemens社では膨大なデータの検索において、生成 AI 検索を使用できるようにすることで課題解決しておりました。また製品やソフトフェアの頻繁に発生する変更への対応について、CICDをソフトウェア定義内で作成、実行できるようにすることでソフトウェアアップデートのコスト削減を実現していました。

    Honda社のイノベーション事例

    Honda社ではSoftware Domain Mobility(以下、SDM)に向けクロスドメイン化の実現について紹介していました。OEMハードウェアが想定される場合に統合的なサービスとしての動作確認について正確ではない状態のため、SDNを再構築、AWS IoT ブレーキ ライトなどの最先端のサービスを使用してクロスドメインモデルを構築していくという内容でした。

    感想

    製造業においてどういった形でAIの利用がされているか、事例を踏まえて紹介されており大変興味深い内容でした。関連のサービスについて機能的な説明ではなく、用途や課題解決方法に視点を置いたセッションでした。

    今後AIの利用が増えていく中で、各業界の特徴に沿ったサービスの選択が求められてくると感じました。